第一話 プロローグ

 

 寝支度を調え、ベッドの中で大事にしているテディベアを抱きながら、美咲は深いため息を吐いた。

(はあ…明日も行きたくないけど、そんなわけにはいかないし…)

 学校での成績は優秀なほうであったが、それだけで学園生活が楽しいわけではない。大人しい性格のせいか友達は少なく、当然のように親友と呼べる相手もいなかった。
 学校に行きたくない理由、それは迫りつつある体育祭の練習にある。美咲は運動が大の苦手であった。その中でも特に走ることが苦手で、毎年体育祭のプログラムに組み込まれる、一年生から三年生が三人一体となって走る三人四脚が悩みのタネだ。

(…先輩もいないし…)

 テディベアをベッドに寝かせ、自身も横になると美咲は去年の体育祭を思い起こす。

・・
・・・・・

「はあ、はあ…」
「ちょっと休憩するか?」
「はあ…大丈夫、です…足を引っ張ってすみません…」
「そうか? なら続けるけど…休憩したかったらいつでも言えよ」

 ニカッと笑った眩しい笑顔を思い出すと、美咲の胸がトクンと高鳴る。
 去年の三人四脚で一緒になった、青山立樹という美咲より一年先輩の男子生徒がいた。明朗快活で、女子にも男子にも人気のある生徒だ。滅多に自分のことを話さない美咲が、ぽろりと零した言葉がある。それは、練習の後ゼエゼエと息を切らせて座り込む美咲を見て、立樹が放った一言がきっかけだった。

「おいおい…美咲、大丈夫か?」
「み、美咲…?」
「名前で呼ぶのは変か? 友達には普通に名前で呼ばれるだろ?」
「…私は友達がいないので」
「じゃ、俺が友達第一号な!」

 その時笑った立樹の顔に、美咲は思わず見とれ、時が止まる感覚を覚えた。体育祭がきっかけで交換したメールアドレスには、頻繁にではなかったが立樹からメールが届くようになり、美咲は高鳴る胸の理由が立樹への「恋」であることを知ることになる。

・・・
・・・・・

 今年は美咲が三年生で、二年生と一年生を引っ張っていかなければならない。しかしコミニュケーション能力が低く、引っ込み思案な美咲は上手にリードすることが出来ず、毎日のように行われる体育祭の練習に嫌気が差していたのだ。
 美咲は携帯電話を持ち、立樹からのメールを見た。立樹に相談すれば、いいアドバイスが貰えるだろうか? いや、迷惑なだけだろうか。しばし悩んだ後、美咲は勇気を出してアドレス帳から立樹の名前を探し電話をかけた。コールが五回ほど鳴ると、明るい立樹の声が耳に入る。ザァザァという雨音が聞こえたことで、美咲は外で雨が降っていることに気がついた。

「おー、美咲。どうした?」
「あ、あの…遅くにごめんなさい。今大丈夫ですか? 外、ですよね」
「ちょっと駅前にな。何か悩み事か? 声暗いぞー」
「はい…体育祭のことなんですけど、今年は私が二年生と一年生をリードしなきゃいけないのに、相変わらず私は足を引っ張ってばっかりだし、上手にリードも出来なくて」
「ハハ! そんなことか。それはな…」

 直後、けたたましい音が受話口から聞こえ、美咲は思わず耳を携帯電話から離した。

「先輩! どうされたんですか? 凄い音が…先輩?」

 美咲がいくら問いかけても立樹からの応答はなく、聞こえてくるのは女性の叫び声と、救急車を呼ぶよう求める声、そして「事故だ!」という大勢の人々の声だった。美咲は何度も立樹を呼ぶが、相変わらず立樹の声は聞こえない。美咲の額に、嫌な汗が流れる。

「まさか先輩…!」

 立樹が事故にあったと決まったわけではない。しかし、家でじっとなどしていられない。パジャマのままでは気が引けるが、お洒落をしていく事態でもない。一番近くに掛けてあった制服を着用し、美咲は家を飛び出し駅前に向かった。
 駅前は人が集まり騒然としており、野次馬も大勢集まっている。その中に立樹の姿を探すが、どこにも見当たらない。野次馬をかき分け、前の方へ出ると担架で運ばれる立樹の姿が確認できた。

「先輩! 先輩!!」

 救急車はサイレンを鳴らして走り去り、しばらく経つと野次馬も一人、また一人と散っていく。最後に残った美咲は落ちていた立樹の携帯を発見すると、その場に立ち尽くした。

(嘘…私が電話をかけたせいで、先輩は…事故に?)

 美咲は頭を抱えてしゃがみ込み、ヒビの入った立樹の携帯を握りしめた。少し離れた場所にはパトカーが停まっており、事故を起こしたであろう運転手が事情聴取を受けている。
 まるで悪夢を見ているかのようだ。

「ごめんなさい、ごめんなさい、先輩…私の、…せいで」

 水たまりに膝を付くと、美咲の瞳からはポロポロといくつもの涙がこぼれ落ちた。涙は水たまりに落ちて溶け、降り注ぐ雨粒が水たまりを更に大きくさせていく。
 ふと、涙でぼやける視界の向こうに、何かが映っていることに気がついた。

「……?」

 ゆらり、とそれが動く。それは、長い髪の女性だった。水たまりの向こうから美咲を見つめている。状況だけで言えば恐ろしい出来事のように思えるが、美咲は不思議と恐怖を感じなかった。水たまりの向こうに映る女性は、そっと腕を美咲に向かって伸ばす。ちゃぷ、と水たまりの揺れる音が聞こえると、白い腕が美咲に向かって伸びる。

「……」

 これは誰なのか? 夢なのか? 幽霊の類だろうか? 女性の白い腕は美咲の頬に今にも触れそうだ。美咲はぎゅ、と固く目をつむったが、頬どころか体のどこにも女性の腕が触れる感触はない。
 不思議に思った美咲が恐る恐る目を開けると、そこは川の流れる美しい草原だった。空は快晴。濡れている髪や制服から、先程まで雨の降っている駅前にいたのは確かだ。
 背後でガサガサと草をかき分ける音がなり、美咲はびくりと肩を震わせた。

「おい、本当なんだろうな。嘘だったら怒るぞ」
「嘘なんかじゃないさ。確かこっちに…あっ」
「…!」

 突如草むらから現れた男性二人に驚き、美咲は言葉を失った。

「す、すみません! ここで水浴びしてるなんて思わなくて」
「バーカ、服着たまま水浴びするやつがいるかよ」

 白い法衣のようなものを纏った大人しそうな男性と、頭にターバンを巻いた男性の二人組だ。二人の刺さるような視線に耐えかねた美咲がおずおずと口を開く。

「あの…何か?」
「すみません、俺たち探しもの…というか人? がいて…」

 歯切れの悪い法衣の男に美咲は首を傾げ、ターバンの男は怪訝そうに美咲を見つめる。

「おい、お前随分変わった格好してるな。どこの国から来た?」
「え? 変わった格好、って…制服のことですか…?」
「どこの制服だ、言ってみろ」
「……」
「兄さん、そんな高圧的な態度はやめなよ。すみません、この辺りに光が降りたのを見たのですが、何か見ませんでしたか?」
「いえ…」
「じゃあなんでそんなにびしょ濡れなんだ? 今日どころか最近、シュルムプカに雨は降ってねえぞ」
「シュルム…プカ?」

 先輩の事故、長い髪の女性、突然変わった景色、聞き慣れぬ単語。美咲の頭は混乱していた。先程は確かに雨が降っていたはず。それは美咲の髪や制服についた水滴が証明している。

「先輩…」
「あ?」

 立樹が事故にあったことを思い出し、美咲は俯き静かに泣き出した。

「ほら! 兄さんがそんな怖い顔と声で言うから」
「どっちも生まれつきのもんだ、ほっとけ。…おいお前、名前は?」

 美咲は指先で目尻に溜まった涙を拭うと、小さな声で「美咲」と答えた。

「美咲、か…美咲ね。おい、一度俺たちと一緒に来い。聖域に連れて行く」
「わ、私は病院に行かないといけないんです」
「病院ってどこか怪我をしているのか? それなら僕が治してあげるから大丈夫。兄さんの言う通り、君には一緒に来てもらったほうが良さそうだ」
「でも…」
「君は少し今の状況に混乱しているように見受けられる。もっともそれは僕たちも同じ…けれど、この現象について心当たりがあるんだ。もし君が無関係であったなら、僕たちが責任をもって君を家まで送り届けると約束するよ」
「わかりました。でも家じゃなくて病院に連れて行って頂けませんか? 先輩が…知り合いが病院に運ばれているはずなんです」
「わかった、約束しよう。それじゃあこっちへ、足元に気をつけて」

 法衣の男は草をかき分け道を作り、美咲を先導した。
 歩くこと二十分ほど。美咲は二人に連れられ、大きなピラミッド状の建物の前に到着した。宝石のようなタイルの間からは透き通った水が溢れており、まるで水のヴェールに包まれているようにも見える。壮大で美しいピラミッドに、美咲は感嘆の声をあげた。

「エレニオル様! ミスティオ様! やはり私たちに黙って外出されていらしたのですね。全く…」

 ピラミッドばかりに注意が向いていたが、下の方に目線を移すと、門番なのであろう女性が立腹した様子で立っていた。

「あはは、ごめんごめん。けど…もしかしたら僕たち、見つけたかもしれない。ついに、さ」
「見つけた…? ということは、その頼りなさげな女の子が…?」
「……」
「……」
「あ、あの…」

 美咲は、じっと自分の顔を見たまま何も言わない女性に戸惑い、自分から声をかけた。女性はハッとした様子で姿勢を正し、お辞儀をしてニコリと微笑んだ。

「ようこそシュルムプカへ。どうぞ、中へお入りください。エレニオル様とミスティオ様も。マクシェーン老師にあまりご心配をおかけにならぬよう」
「へいへい、お小言はまた今度な。じゃ入るぞ」

 美咲はターバンの男に引っ張られ、ピラミッドの中に足を踏み入れた。美咲の頭は混乱しっぱなしで、ただ黙ってエレニオル、そしてミスティオと呼ばれた男二人の後ろをついて歩く。
 長い長い廊下の両側にも水が流れており、ピラミッドの中は水のせせらぎと三人のバラバラな足音が響いていた。その廊下の先にあったのは、人が一人立てる程の大きさがある平べったい石だ。

「さ、乗れよ」
「乗る?」
「いいから乗れって」

 乗って一体何をするのかわからず、美咲はただただ戸惑うばかりだ。

「それは違う階層に一瞬でワープするポータルだから怖がる必要はない、…ってきちんと説明しなきゃ駄目だろ、兄さん」
「一々どんくさい女は嫌いなんだよ、ほら」
「きゃっ」

 ターバンの男に背中を押された美咲は、バランスを崩しながらも辛うじて石の上に立つことが出来た。足元にある石の周りに波紋が広がり、次の瞬間には景色が変わる。
 次に出た部屋は大広間で、やはりここにも水が流れていた。室内に設けられた小さな池のようなスペースには、蓮の花がゆらゆらと揺れている。

「別に怖かねぇだろ?」
「はぁ…」
「マクシェーン! マクシェーン、どこにいる?」

 部屋の奥から、一人の老人がゆっくりと姿を見せる。法衣の男と似た白い法衣を身にまとっており、年齢は七十歳前後だろうか。とても優しい顔立ちの老人だ。

「エレニオル様、そのような大声を出さずとも聞こえておりますよ。マクシェーンはここにおります。どうなさいました?」
「シュルムプカの伝説は本当だったのかもしれない。僕も信じられない気持ちでいっぱいだよ」
「…まさか、先程お出かけになられたとお聞きし…、落雷ではと思っておりました。そちらの少女が?」

 マクシェーンと呼ばれた老人が、加齢のせいか小さくなった目を大きくして美咲を見ると、美咲は気負いしターバンの男の背後に隠れた。ターバンの男は更にその背後に回り込み、美咲の背中をグイッと押す。

「シュルムプカの神子なんて、どんな神々しい美女かと思いきや…ガキじゃねぇか」
「兄さん! 女性にそんなことを言うなんて失礼だろ!」
「エレニオル様、ミスティオ様も…まずはそちらの女性に着替えを用意し、その間入浴場でゆっくり休んで頂いては如何でしょうか? 話は長くなりますし、髪や服が水に濡れて…聖域の中は涼やかですからな、濡れたままでは些か寒いかと思われます」
「あ…た、確かに。美咲、入浴場へ案内させるから風呂に入ってくるといい。自己紹介も含め、話はその後にしよう」
「エレニオル様、それでは私がご案内致します。よろしいでしょうか?」

 どうやら法衣の男がエレニオルという名前のようだ。彼は女性の申し出を聞き入れ、女性は美咲に微笑みを向けて「私が先導しますので」と口を開き歩き出す。先程とは別のポータルの上に立ち移動すると、再び景色が変わる。基本的には同じ構造なのか、廊下の両脇に水が流れており、蓮の花が揺れている。未だ混乱はしているものの、少し余裕が出てきた美咲は蓮の花にしばし見とれた。

「聖域に咲く蓮の花は美しゅうございましょう?」
「え、ええ。そうですね」

 元から人見知りをする美咲は、恥ずかしさを隠すためやや俯いて歩くことにした。女性はそれ以上声を発することはなく、やがて石造りのドアの前で足が止まった。

「ここは私達神官見習い用の風呂場なのですが…こちらでよろしいですか?」
「私はどこでも…あの、大丈夫です。お借りします」
「服はなかなか乾かないかもしれませんね…。ご入浴の間に、簡単なものではありますが服をご用意しますので」
「そこまでして頂かなくても…」
「ふふ、神子さまってとても控えめな方ですのね。それでは、ごゆっくり」
「えっ、あの!」

 引き止める声も虚しく、女性はお辞儀をしてドアを閉め立ち去ってしまった。確かに美咲の体は濡れた制服や髪のせいで冷えていたため、風呂を借りられるのは有り難い。シャワーで体を流した後、普段は大勢で入るのであろう、一人で入るには広すぎる浴槽に身を沈めた。

「ふう…。のんきにお風呂なんて入ってて、いいのかな…」

 温かな湯が雨のせいで冷えた美咲の華奢な体を包む。

「きっと夢だよね…、だから先輩もきっと…」

 風呂の湯に反射する美咲の顔は今にも泣き出しそうだ。

(きっと夢だから…もうすぐ、覚めるから)

 右目から流れた一筋の涙は、湯の中に落ちて溶けていった。

 ─…十分に体が温まり、風呂からあがると制服の代わりにタオルと代わりの衣服が置かれていた。先程の女性が着ていたものと同じだろう、黒いサテンのワンピースと、半透明のストールが二枚。美咲はお洒落に疎いこともあり、ストールを二枚もどのように着用すればいいのかわからず、四苦八苦していると「失礼します」の声の後、ドアが開いた。

「あら…私としたことが、お着替えお手伝い致します」
「すみません」

 ワンピースはただ着るだけだが、どうやら半透明のストールは真ん中を肩にかけ前後に垂らし、ベルトを用いて腰で固定し、それより下は垂らして着用するようだ。

「とてもお似合いですよ。では大広間に戻りましょう、神子さま」
「ずっと気になってたのですけど…神子さま、って何ですか?」
「え? エレニオル様やミスティオ様からご説明を受けていらっしゃいませんか?」
「はい、何も…なので一体なんのことかわからなくて」
「大広間に戻れば、エレニオル様とミスティオ様がご説明されると思いますわ。詳しいお話はお二方からお聞きくださいませね」

 来たときと同じポータルに乗り、美咲は先程の大広間に戻った。先程よりも空気は重たく、美咲の歩く道を守るようにして神官たちが立っている。美咲を先導していた女性もそこに並ぶと、通路の先に立つ神官の男─恐らくエレニオルという名前の男だ─が美咲を呼んだ。美咲はゆっくり通路を進み、うつむき加減で口を開く。

「あの…」
「まず自己紹介が遅れたことを許して欲しい。僕の名前はエレニオル」

 白い法衣を着た男が名を名乗った。品の良い豪奢な椅子に座ったエレニオルは優しく微笑んだ。

「で、俺がミスティオ。見ての通り、エレニオルとは兄弟で俺が兄」
「…私は佐倉美咲です。お風呂と着替え、ありがとうございました。それで、ここは…?」
「それも説明が遅れたね、本当にすまない。ここはシュルムプカ。女神シュルムプカを信仰している国で、この建物はシュルムプカの中心に建てられている“聖域”だ。とても古くからある由緒ある建物だけど、正式な名称は誰も知らない」
「は、はあ…」
「…それで、僕は先程たまたま建物の外に強い光を見た。それで僕は兄さんと一緒にさっきの川へ向かったわけだけど…そこに見慣れぬ格好の美咲がいた。兄さんが言ったとおり、ここシュルムプカにはこの数日間雨が降っていない。水浴びをしていたとも思えないけど、あそこで美咲は何をしていたのか教えて欲しい」
「……」

 そんなことを聞かれても、と美咲は口をつぐむ。立樹が救急車に運ばれている姿がフラッシュバックし、体がぶるぶると震えた。何を言えばいいのかもわからないが、言葉を発することも難しい。震えだした美咲を見て、エレニオルはマクシェーンに助言を賜ろうと視線を向けるが、マクシェーンはひげを撫で、目を細めて美咲をじっと見るだけだ。

「シュルムプカでは近年、大小を含めた様々な異常が発生している。神聖なる水の汚染、その水を飲み凶暴化する人々や動物…上げだしたらキリがない。古よりの伝承で、シュルムプカを始めとする六大神は、その神力を持って異なる世界に干渉する力をも持つと言われている。そして己が守護する国に危機が訪れた時、神に選ばれし神子をこの世界に召喚する、と」
「まぁ要するに、美咲が神子なんじゃねーかって話になってるってこった。相変わらずエレニオルは話がなげーな」
「兄さん! 全く…。美咲、君が異世界から来たのではないのなら、どこから来たのかを教えて欲しい。教えられるはずだろう?」

 皆の視線が美咲に集まる。美咲は緊張しながら、言葉を選んで口を開いた。

「私は…夢を見ているのだと思っています。シュルムプカという国名は見たことも聞いたこともありません。きっと…きっとショックで夢を見ているだけなんです。だから先輩も、先輩も…」

 先輩という言葉を発した途端、美咲は目尻いっぱいに涙を溜めたが、すぐに指で拭い取った。

「おいおい、夢なんかじゃないぞ。シュルムプカはここに存在している。国も、民も、そして神もだ。現実受け入れろよ」
「兄さんは口を挟まないでくれよ…。すまない、美咲。兄さんも国を思ってのことなんだ。許して欲しい」

 美咲は俯いたまま、気にしなくていいという意を込めて首を横に振った。

「大丈夫。君が神子かどうかを確かめる簡単な方法があるんだ。それを行えば、女神シュルムプカから力を授かっているか否かがすぐにわかる」
「授かって、って…私は普通の女子高生で、特別な力は何も持っていないです」
「四の五の言わずにさっさとやれって。すぐにわかるらしいぜ。俺も実際に見たことはねえけど」
「女神シュルムプカが残した言葉があるんだ。我召喚せし神子、穢れを祓い清らかなる浄化の能力を得る、とね。もうすでに準備はできている。美咲が神子じゃないとしたら、先程の約束通り責任を持ってどんな手段を使ってでも、君を家まで…ああ、病院だと言っていたっけ。送り届けると約束しよう。だから一度それを試して欲しい」

 美咲は受け入れがたいことの連続で憔悴していたが、違うとわかれば病院に向かえるのだからと自らに言い聞かせ「わかりました」と小さく呟いた。

 

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